21歳男 単勝元返しのレースを外し、競馬の奥深さを学ぶ

今から25年前の1994年秋のことです。
当時21歳だった私は競馬を始めたばかりでした。
そんな素人ギャンブラーだった私を虜にしたサラブレッドがいました。
その名はナリタブライアンといい、その年、三冠馬に輝いた名馬でした。

サラブレッドが3歳の時に行われる皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つは三冠レースといわれ、三冠レースを全て勝った馬は、長い競馬の歴史の中でナリタブライアンが5頭目でした。
現在でも通算7頭しかおらず、達成が困難な偉業です。

漆黒の馬体で、圧倒的強さで勝ち星を重ねるナリタブライアンに、私は熱狂していました。
ナリタブライアンが出走するレースは必ず馬券を買い、応援馬券として、ナリタブライアンの単勝も買っていました。

破竹の勢いに乗ったナリタブライアンの単勝は倍率が1倍代前半で、馬券としての儲けはほとんどありませんでした。
しかし徐々に下がっていく単勝オッズは、ナリタブライアンの力の証明でもあり、私は単勝オッズを見るのが楽しみでもありました。

5月に行われた三冠レース2戦目の日本ダービーでも大差をつけて優勝したナリタブライアンが、菊花賞に向けた秋初戦に選んだのが京都新聞杯でした。

当日、場外馬券場に行った私は、これまで通り、勝負馬券と応援馬券であるナリタブライアンの単勝1000円を買いました。
その時のナリタブライアンの単勝オッズは驚きの1.0倍でした。

あまりに多くの人がナリタブライアンの単勝馬券を買ってしまったため、単勝元返しとなってしまったのです。
つまりナリタブライアンの単勝馬券を100円で買って、ナリタブライアンが1着になっても100円しか返って来ないということです。
もちろん負けることだってありますので、圧倒的に賭ける側が不利です。
もはやギャンブルとして、成立していません。

ただ当日の様子は、皆一様にナリタブライアンの勝ちは決まりで、後は相手がどの馬になるかというムードで、元返し止む無しといった感じでした。

そして、レースは始まりました。
良い位置に付けたナリタブライアンは最後の直線を迎え、後はいつものように他の馬を突き放すだけでした。
しかし、いつものような加速が見られません。
どうにか先頭に立ちましたが、後ろからスルスルといった感じで3番人気のスターマンが近付いて来て、ナリタブライアンを追い抜いてしまいました。

見ていた人が呆気に取られている中、スターマンが1着でゴールし、その瞬間、私を含めて多くの人が持っていたナリタブライアンの単勝馬券が紙屑と化しました。

レース後、場外馬券場は変な空気でザワついていました。
長年馬券を買っていた人たちも含めて、外すはずのない馬券を外した影響だと思います。

単勝元返しになっても馬券は成立し、その馬券が外れるという体験は、競馬の奥深さや面白さを素人ギャンブラーだった私に教えてくれました。

それから11年後、無敗で皐月賞、日本ダービーを制覇したディープインパクトが三冠レース最後の菊花賞に望んだ時も、単勝元返しでした。
その時、私はディープインパクトの単勝を1000円買い、見事に11年前のリベンジに成功しました。